hiro_ame’s blog

美術マニアで科学と宗教を学ぶのが大好きな絵描き。

ダヴィッドの超表現力

前回はダヴィッドのナポレオンの肖像画について書きました

 

今回も引き続きナポレオンの思惑いっぱい(笑)の作品を紹介します

なぜ同じような意味あいのある作品をまた紹介するかというと

私はこれがダヴィッド最高傑作であることと

そして、プロパガンダ(政治的な意図、宣伝)を超えたところに

伝えたいことがあるからです



「ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョゼフィーヌの戴冠」

f:id:hiro_ame:20200620100625j:plain

 

この絵は人物がほぼ原寸大で描かれた

縦6.3m×横9.3mの大作です

 

ナポレオンが妻ジョゼフィーヌへ王冠を乗せる戴冠の様子です

なぜ、ナポレオンじゃなくて皇妃(妻)の場面なのか

そこがとても重要なのです!



通常の戴冠式ではローマ教皇が皇帝に

王冠を乗せるのが通例です

でもこの絵ではナポレオン自ら皇妃に王冠の乗せています

ローマ教皇はナポレオンの後ろで座ってその様子を見ています

 

つまり、教皇でもナポレオンに口出しできないほど自分の権力が絶大だということを

示しています

ダヴィッドの当初の下書きではナポレオンが自ら王冠を持って自分の頭に

乗せる様子を描こうとしていましたが(それが史実だったみたいです)

後世に残すにはあまりに独裁的なので今の形に修正されました



ダヴィッドが仕掛けた演出はこれだけではありません

教皇が後ろで2本指を指した姿を描くことで祝福していると示したり

(天使が神の使いとしてやってきたときの手の所作)

ジョゼフィーヌは当時41歳にも関わらず、20代の少女のように儚げに

描かれていたり

実際には出席していなかった、不仲の母と弟が描かれている

(出席したことにしてより祝福されているという演出)

などなど

とても神聖で感動的な演出がされています

 

こうすることによって、ナポレオンの皇帝としての力、神聖さ

格式高い重々しさなどを民衆や後世に残したかったのかな

と思います



とても計算高い絵としても観ることもできます

しかし、目的がどうあれ

 

私はなによりもダヴィッドがこの大作を成し遂げた凄まじさを感じます

圧倒的な表現力、演出力

この絵はルーヴル美術館で2番目に大きい絵です

ここまでの超大作にすることで自分があたかもそこに出席しているような

静けさ、神聖さ、壮麗さなど

言葉では表せないくらいの素晴らしさがそこにあります

 

ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」にも同じことが言えると思います

f:id:hiro_ame:20200620100712j:plain



どちらもルーヴルの至宝です

 

ダヴィッドのすごさはこの伝えたいもの、訴えたいものに対する

表現力にあるのではと感じます



本当に過去の巨匠たちはすごい人ばかりです!!




本日も最後まで読んでいただきありがとうございました!