鉱物について ー辰砂ー
今回は鉱物と絵画の関係性について。
絵を描くのに必要な絵の具の原料は何かというと
現在は、化学的に合成して色を製造していますが
以前は、様々な色の石をすりつぶして粉状にしてそれを油や膠を糊として使って絵を描いていました。
日本画は現在でもそれが続いており画材屋さんに行くと粉状の顔料が現在でも売られています。
この顔料となる石について、様々な鉱物や宝石が使われていました。
古くから歴史ある鉱物顔料として
今回は『辰砂』について。
洋名:バーミリオンレッド 和名:朱、丹
この色は深い濃い赤で、『辰砂』という鉱物を使っています。
辰砂は化合物名 硫化水銀 HgSという物質です
この朱色は古くから日本でも使われており
神社やお寺にもこの鉱物が使われたりして、日本にとっても歴史的に非常に重要な色で、魔除けの色でもあります。
しかし、辰砂は水銀を含んだ物質で水銀は人間にとって毒になります。
1950年代に日本でも公害病となった『水俣病』の原因はこの水銀中毒です。
少量だとしても解毒されずに体内で水銀が蓄積され
口だけでなく皮膚や呼気からも吸収されるため、東大寺の奈良の大仏建立時に使用した辰砂にて水銀中毒になった人が多くいたとも言われています。
(大仏の金メッキに使用したようです)
その反面、辰砂は漢方薬にも使われているようです。
詳細は私もわかりませんが少量なら薬になるのかもしれません。
秦の始皇帝をはじめとする古代中国の皇帝は不老不死の薬を作らせた歴史があり
丹薬として辰砂が含まれている薬を定期的に服用していたようで
それが死因となったり寿命が縮んだりした皇帝もいたのではと言われています。
ちなみに、秦の始皇帝に命じられた徐福という人が不老不死の薬を求めて日本にやってきたという「徐福伝説」が和歌山や三重など各地にあります
錬金術にも辰砂が重要だったようでヨーロッパでは「賢者の石」とも言われていたそうです。
(水銀を触媒に金が作れると言われてきたそうです。もちろんマユツバです)
古事記や日本書紀に登場するスサノヲノミコトは「朱砂」(すさ)から名前が来ているという話だったり
『辰砂』は世界中で非常に重要で歴史深い鉱物なのです。
辰砂、バーミリオンレッドを使った有名な絵画として
3人の人物が描かれた絵画で鮮やかな頬や唇のバーミリオンが特徴的です。
関根正二が歴史を知っていたかはわかりませんが
このレッドを使うことで、とても力強い眼光と生命力に溢れた絵となっています。
レッドは死と生命力の象徴の色です。
このようにバーミリオンレッド、朱色、辰砂のことを知るだけで
絵画や建築などに使われている赤色がとても興味深くて面白いものだなぁと私は感じています。
本日も最後まで読んでいただきありがとうございました