綺麗で静かな川 豊かな緑
そのなかで花々とともに女性が川に浸かって流れています
その視線はどこを見ているのか
空を見ているのか どこも見ていないのか...
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日本人なら一度は見たことのある作品
ラファエル前派の画家 ジョン・エヴァレット・ミレイ作『オフィーリア』
この作品の”オフィーリア”って何でしょう?
オフィーリアはイギリスの劇作家シェイクスピアの劇「ハムレット」に登場する人物です
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「ハムレット」はデンマークの王子ハムレットが死んだ父親の幽霊に遭遇して、その父が「俺は弟(ハムレットの叔父で現王様)に殺された。代わりに復讐してほしい」といわれて、その復讐のために自分の頭が狂った演技をして叔父に復讐する物語です
オフィーリアはハムレットの恋人です
この作品はオフィーリア最後の場面
恋人の気が狂って(狂ったと勘違いし)自分も心を痛めていた時に
ハムレットが誤ってオフィーリアの父を殺してしまったため
自分も頭が狂ってどこかに徘徊して行ってしまった...
花を摘んでランランと楽しそうな感じで川べりにきて
柳の木に上っていたらその枝がポキッと折れて川に転落
自分が川に落ちたことも気づかずに花を持ってランラン歌を口ずさみながら
そのままゆっくり川に流され沈んでいってた
その時の一場面
狂気じみたなかなか怖い場面ですね
私たち日本人にはシェイクスピアは馴染みの深いものではないのでピンと来ないかもしれませんが、要は、イギリス人なら誰でも知っている物語の一場面を画家が描いた作品なのです
わかりやすく言うと
トトロとさつきがバス停で傘をさしながらバスを待っているシーンを新進気鋭の画家が描きました
といった感じですかね?
当時のイギリス人はこの作品をみて
「「ハムレット」のあの場面を描いたのか。ほうほう。オフィーリアの心理と情景をよく描いてて、上手いな」といった感じで観ていたのではないでしょうか?
実際この作品は発表当時から人気を博して
この作品がきっかけとなりミレイはロイヤルアカデミー会員となりイギリス美術界で有名画家になり、しかも準男爵の貴族の称号まで賜っています
ところでこの作品、日本で特に有名です
何でなんでしょう?
「オフィーリア」が有名になったのは
夏目漱石の「草枕」で本作についての記述があるのがきっかけです
草枕の主人公は洋画家でオフェリヤ(オフィーリア)のことを「風流な土座衛門」(水死体)といっています
主人公は「余も余の風流な土座衛門をかいてみたい」といっています
夏目漱石はイギリス留学時代にミレイの「オフィーリア」をみています
ミレイの所属するラファエル前派も好きだったみたいです
ちなみに風景画家のターナーも好きで「坊ちゃん」の中で出てくる島にある松がターナーの絵のようだからこの島を「ターナー島」としようといっています
夏目漱石は美術に造詣が深かったようです
日本人が一度は見たことのある絵が「オフィーリア」なら
イギリス人が一度は見たことのある絵は「シャボン玉」
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これは当時のイギリスの石鹸会社の広告に何世代も使われたためイギリスでは有名な絵となりました
次回は「オフィーリア」がどれだけすごい絵なのか、ところでラファエル前派って何?について