hiro_ame’s blog

美術マニアで科学と宗教を学ぶのが大好きな絵描き。

有能すぎて過労死 偉大なる画家の中の画家ベラスケス(続き)

ディエゴ・ベラスケスラス・メニーナス』の解説の続きです。

ラス・メニーナス』from wikimediacommons

バロック絵画の特徴として、明暗対比と躍動的な人物。まるでスポットライトが当たっているような場面。

バロック創始者カラヴァッジオの作品でみると、真っ黒な背景の中に人物がスポットライトのような強い光を浴びて強調されていること。

バロックの大巨匠ルーベンスのように人物がひしめくように描かれて一人一人の躍動感がすごいこと。むしろごちゃごちゃしすぎてちょっと日本人には胸やけですが。

それに比べて、ベラスケスの作品はどれも柔らかい光と不思議な静けさがあります。

3人の作品と見比べると一目瞭然。

左から、カラヴァッジオルーベンス、ベラスケス from wikimediacommons

これがベラスケスの特徴の一つです。人物もたくさんいてごちゃごちゃしているはずなのに、静か。

王女様や侍女たちの動きもとても上品でゆったりしたような感じがします。

ベラスケスの描く人物はみんなそうなのです。王様でも平民でも、なんか知的そうで品がある。

そして静か。それも全くの無音ではなくて、とても優雅な静けさがあります。

人物の描き方のほかにも、この柔らかい光も重要です。カラヴァッジオの強烈な光ではなく、『ラス・メニーナス』では右側の窓からのとても柔らかい光、この光が王女にまっすぐ当たって、王女の高貴さが表現されています。

絵を見る人は王女にまず目が行きます。

 

前回、この作品はベラスケスが絵の前に立っているであろう国王夫妻を描いているところにマルガリータ王女が侍女を連れてやってきた場面を描いていると書きました。

 

hiro-ame.hatenablog.com

 

つまり、私たちは国王夫妻が立っているであろう場所からこの作品を鑑賞することになります。

だから、この作品は私たちが作品を見ると同時に、王女や侍女、ベラスケスに見られている作品でもあります。

 

次に細部を見ていきましょう。

マルガリータ王女の描き方をみると、だいぶ雑に描かれています。

from wikimediacommons

筆跡がはっきりわかる、しかもほんの数回のタッチをサッサッサッと重ねただけ、それだけで胸の飾りを描いています。こんなに雑でも遠くから見るとはっきりと飾りがわかります。

これは200年以上も後のマネや印象派のような描き方です。ベラスケスは印象派を200年以上先取りしてます。

マネはこの描き方もリスペクトして自分の作品でも挑戦しています。ちなみにそのマネを慕っていたのが印象派のモネやルノワールです。

エドゥアール・マネの作品 明らかにベラスケスを意識してる from wikimediacommons

 

右手前には小人症の人物が描かれています。王女様と一緒の画面になぜ?と思いますが、昔の各国の宮廷には宮廷道化師として、ピエロや小人症の人が「楽しみを与える人々」「慰みの人々」という職業として、ピエロや奇形の人がいました。そこそこ待遇良かったそうです。

from wikimediacommons

王女に付き添っている若い女性2人が王女の侍女、その侍女の少し後ろ、宮廷道化師の後ろにいる2人がシャペロンというしつけ役、お目付け役。一番奥のドアのところにいる人が侍従長

 

この作品のとんでもないところは構図にあります。

描かれている人物たちがなんと、7層にも描き分けて、奥行きが広がっています。

まず、ベラスケスが描いているであろう左側のキャンバスと右のワンちゃんが同じ位置にいます。次に小人症の人たち。次に王女と侍女。次にベラスケス。次にシャペロン。次が鏡の中の国王夫妻。一番奥が侍従長

これだけ見事に7層に分けて奥行きが描かれている作品は他に見たことがありません。

 

これを真似しようとして(多分)失敗したのがスペインの宮廷画家ゴヤ

ゴヤ『カルロス4世の家族』

from wikimediacommons

これは完全に『ラス・メニーナス』を意識して描いた作品です。

ベラスケスと同じ位置にゴヤ本人とキャンバスが描かれてます。でも人物で奥行きを描こうとしてますが、あんまり奥行きがありません。ゴヤ自身も暗く描かれて奥に引っ込んでいて、あんまりベラスケスほど主張してません。

ベラスケスの柔らかい光と比べて明暗対比が強めで全体的にベラスケスよりごちゃごちゃして見えるため、品の良い静けさはありません。

サージェントも頑張ってます。ベラスケスより層の数は低いですが。

from wikimediacommons




ラス・メニーナス』は一番光が当たっている王女にピントが合うように、王女の顔がはっきり描かれています。人間の目は奥に行けば行くほどピントが合わなくてぼやけて見えます。だから一番奥にいる侍従長はとてもぼやけて描かれてます。

しかし、この作品は7層に奥行きが広がっているので、なんとベラスケスはその層に合わせてぼやかし具合も7層に描き分けています。ベラスケスとシャペロンたちもぼやかし具合が違います。

さらに、人間の目は手前側もぼやけます。だから王女より手前にいる小人症の人たちもわずかにぼやけて描かれてます!

こうやって、光の入り方、人物のいる位置、人物のぼやけ具合で奥行きを広げて、一番奥の侍従長のところに行きます。奥のほうは光が入らず暗くなるところを、ドアを開けることで光を入れて侍従長がはっきりわかります。これらがすべて計算されて描かれています。とんでもない。

 

さらにもう一つ。もう一度全体をよく見ると、なんとこの作品、人物が綺麗に下半分に全員収まっています。上半分はなんと天井!実は上方向にも空間が広がっていたんです。

意外なことに、よーーく見ないとこれになかなか気づけません。

普通は描くものが乏しい天井をこんなに広く描くと上がぽっかり空いて下に描かれたたくさんの人物との対比で、絵としてなんとなく違和感を感じますが、それを感じさせないほど見事に描かれています。

だからこの作品は奥にも上にも広がりがあります。

これを平面のキャンバスにここまですごい画力で、見事な構図で描いちゃってるんです。

 

私たちは国王夫妻と同じ位置に立ってこの作品を見ることで、まるでこの部屋にいるかのような没入感を楽しめるとんでもない作品なのです。

 

作品もさることながらベラスケス自身もとても有能だったようで、フェリペ4世に非常に信頼されており、宮廷の美術品の鑑定や収集などもすべて任されました。

今のプラド美術館にある作品の多くはベラスケスが選定したもの。

さらに画家の地位じゃありえない王宮配室長という王城の全体を管理するような重職につき、そっちの仕事で大忙し。

さらにサンチャゴ騎士団の騎士にも任命されます。

歴史の教科書的にもビジュアル的にも微妙なフェリペ4世ですが、この人の功績は若きベラスケスを見出したことだ。とよく言われます。

その王の信頼が篤すぎて、描けたのは美男美女でもない王家の肖像画ばっかりで、画家以外の仕事も忙しすぎてあまり作品数も残せず。。。

だから親交のあったルーベンスと比べて作品数がとても少ないです。後の私たちからしたら、もっとたくさんの作品を見たかった。。。

その結果、なんと、忙しすぎて過労死。

 

ベラスケスの魅力はまだまだこれだけじゃありません。面白くて素晴らしい作品ばかり。数は少ないですが、歴史画や宗教画もあります。

是非ほかの作品も鑑賞してみてください。

 

長くなりましたがここまで読んでいただきありがとうございました。



次回はこれまた大大巨匠レンブラント

有能すぎて過労死 偉大なる画家の中の画家ベラスケス

ベラスケスは1600年代のスペイン王室に仕えた宮廷画家です。

この人は、西洋絵画史上最も偉大で最高峰の画家の一人といっても間違いありません。

それは、後の時代の大画家たちがベラスケスをこぞって絶賛しているからです。

この人をディスっている人を見たことがないです。

みんながみんな大絶賛。

ディエゴ・ベラスケス(『ラス・メニーナス部分』)
 from wikimediacommons

 

ベラスケス後のスペインの宮廷画家になったゴヤ、他にピカソもダリも。イギリスのフランシス・ベーコン、ジョン・シンガー・サージェントなどもベラスケスリスペクト作品を描いてます。

フランスのエドゥアール・マネに至っては「画家の中の画家」「私が絵画において理想と考えるものはベラスケスがすべて実現してる」とまで言ってます。

後の世代の世界中の巨匠がベラスケスに追いつけ追い越せと目標に掲げるほどの大画家です。

 

バロック絵画というと背景が暗く、明暗対比がついており、ルーベンスのように大げさでちょっとゴチャゴチャしてる作品が多いですが、この人の作品はそれに加えて、品がある。

多少ゴチャゴチャしていても、何とも言えない静けさがあり、一人一人の登場人物の個性が際立って、とても丁寧に描かれています。

 

そのベラスケスの最高峰の作品が『ラス・メニーナス』です。

「世界三大絵画」と検索してよく出てくるのがこの作品です。

from wikimediacommons

 

筆者も昔からこの作品はすごい!と何度も聞いたことがありましたが、何がそんなにすごいのか??

よくわかりませんでした。

しかし、この作品の解説などをじっくり聞いて理解できた時、鳥肌が立ちました。

これはとんでもない絵画でした。

後の巨匠たちが褒めちぎるほどの絵画技術がこれでもかと盛り盛りで入っているため「玄人がわかる傑作」なのかもしれません。

 

実際に作品を観ていきましょう。

この作品は『ラス・メニーナス』「侍女たち」という意味です。

中央にいてスッとこちらを見ている少女が当時のスペインハプスブルク王家のマルガリータ王女。

王女を取り囲むようにお付きの侍女たちが描かれてます。

画面左には筆とパレットを持ったベラスケス本人がいます。何やらこっちを見てる。

よく見るとベラスケスの手前に大きなキャンバスがあります。

つまり、ベラスケスはこちらにあるものを見て絵を描いてる場面なのです。

 

じゃあ、ベラスケスは何を描いてるのか?それもこの絵をみるとわかります。

ベラスケスのすぐ右横にある鏡。ここに男女が映っています。ベラスケスはこの2人を見て描いています。

この2人はマルガリータ王女の両親。フェリペ4世と王妃マリアナ夫妻。鏡の拡大図をみると、ずいぶんぼやっと描かれてます。それなのになぜ、国王夫妻だとわかるかというと、この作品を参考にしたんだろうとすぐわかるからです。

from wikimediacommons

ベラスケスが描いた国王夫妻。鏡だからちゃんと反転してる。

こんなにぼやっと描かれてるのに、国王夫妻であることがわかる。これだけでも画力のすごさがわかります。

 

つまり、この絵はベラスケスが国王夫妻を描いているところに、娘のマルガリータ王女がトコトコトコ~とやって来て「お父様、お母様何やってるの~?」その後ろを侍女たちが「お待ちください王女様~」ドカドカドカ~とついてきた。そういう場面。

侍女はこちら(国王夫妻)に気づいてご挨拶をしています。(もう一人はまだ気づいてない?)

 

当時は高貴な人は1枚のキャンバスに1人ずつ描かれる肖像画がほとんどなのに、このように場面を切り取ったかのような、しかも、王女だけじゃなく侍女たちまで一緒に描かれている集団肖像画のような作品はスペインではまず珍しいです。しかも一番敬わなければならない国王夫妻は鏡の中でぼやっと描いただけ!

このスナップ写真のような描き方でかつ王族(下々の者も含めた)の集団肖像画というだけで画期的ですが、この絵のすごさはそれだけじゃありません。



次回は、この作品の真髄をみていきます。

盛り盛り増し増しでゴチャゴチャ ルーベンス(続き)

ルーベンスの超大作『マリー・ド・メディシスの生涯』という全24点の連作

どれもこれも人物がほぼ等身大で描かれたメートル級の超大作。

 

ルーベンスが描いたマリー・ド・メディシス肖像画

from wikimediacommons

 

 

マリー・ド・メディシスとは1600年にフランス王アンリ4世に嫁いで王妃になった人物

メディシスというくらいでイタリア、フィレンツェメディチ家出身。

メディチ家はお金でローマ教皇も王妃も出した大変な名家です。

つまり、とんでもないお金持ちのお嬢さん。

当時フランスはひどい財政難で莫大な持参金目当ての政略結婚でした。

(もちろん?)夫婦仲は最悪。夫のアンリ4世は50人近くも愛人がおり、フランス語も話せないマリーはひどい浪費を繰り返します。

アンリ4世が暗殺されると、賢王と呼ばれたアンリ4世の政治を否定するような政治を行い、息子のルイ13世と対立するようになります。政治的にも自分の立場が危うくなった頃、自分の立場の正当性を示すために、ルーベンスに依頼したのがこの連作。

つまり、これは政治的プロパガンダも目的といわれています。

自身の生涯を歴史画として残したかったとも。

 

依頼されたのが当代の大画家ルーベンス

バロックの開拓者カラバッジオは依頼者の要望や忖度などほとんど聞かずに、自分が正しいと思ったものを描いて依頼者を激怒させていましたが、ルーベンスは要望をしっかり聞いて、忖度満載の作品を描きます。むしろ太鼓持ちすぎてこれは誰??というくらい派手。

盛り盛り増し増しゴチャゴチャの極致が『マリー・ドー・メディシスの生涯』の連作です。

いくつか作品をみてみましょう。

 

〇「公女の教育」マリー幼少期の勉学風景

from wikimediacommons

若い美しい少女が神様から教育を受けている場面。

教育担当神様は芸術の神アポロン、知恵の女神ミネルヴァ、話術の神様メルクリウス

これだけの豪華メンバーが祝福して教育しているすごい人です!

という絵。

 

〇「マルセイユ上陸」有名な作品です。

アンリ4世と結婚するために船でフランスに上陸した場面。

from wikimediacommons

中央奥にいるのがマリー。手前の裸の人たちは誰かというと、海の神様ネプトゥヌスや女神たち。マリーの航海の守護をして無事にたどり着きました。神様たちもマリーが来たことを祝福してます!

という絵。

このゴチャゴチャ具合もすごいですが、マリー本人は奥に少し小さめに描かれて、手前の神様のほうが生き生きとした顔と豊満な体で大きく描かれているところからすると、やっぱり忖度しつつもルーベンスが何を描きたかったのかわかりますね。

 

もちろん現実のマリーの暗黒面は描くか、ぼかして描きます。

〇「ブロワ城からの脱出」

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息子ルイ13世によってブロワ城に幽閉されたマリー。そこから脱出した場面。もちろんこんな情景は現実ではありません。悪政治を行って幽閉されたのに、威厳に満ちた姿で描かれて、この脱出が正当であるかのよう。夜の神ニュクスと曙の神アウロラが明るい松明をもってマリーを導いています。未来は明るい。マリーはフランスの表舞台にこれから復帰しますよ。とでもいうのか。

という絵。

 

こんな感じの異次元の忖度絵画が24枚。

よくもまあ、これだけローマ神話とからめてマリーの素晴らしさ、王妃としての正当性をプロデュースできてるルーベンスがすごい。

どの作品もゴチャゴチャで日本人からすると胸焼けしそうですが、とにかく派手。豪華。どの作品も傑作です。

 

そして、忖度絵画極めつけがこれ

〇「摂政マリーの至福」

from wikimediacommons


まだ幼いルイ13世の摂政として政治を振るうマリー

もちろん中央でこちらを向いているのがマリー。よく見ると、右胸が出ちゃってる!

伝統的な西洋絵画のルールとして、現実の人物はちゃんと服を着て描かなければなりません。

でも西洋絵画は裸祭りの絵が多いです。それはなぜかというと、現実にはいないものは裸でOKだからです。神様、女神様、知恵や豊穣など概念の擬人化などは裸で描かれます。

このルールを逆手にとって、ちょっと出ちゃってるマリーはもうむしろ「神!」ということを示しているのです。通常、天秤を持っているのは、正義の女神ユースティティア。

つまり女神であるマリーは正義をもって政治をふるってます!マリーは神!

周りの人物もキューピッドやミネルヴァなどの神や羨望などの擬人化。

 

こうやって一つ一つの人物や物にもすべて意味があります。

それらを紐解きながら見ていくと、これらがただの胸やけ絵画というだけじゃなく

当時どれだけの政治的意味があって、それを神話とからめてマリーの生涯を描いたのか。

ルーベンスのプロデュース力、ダイナミックな構成力、完成度の高さが凄まじい。

 

 

ルーブル美術館にはこの連作を集めて展示している「ルーベンスの間」があります。

from wikimediacommons

とてもすごい贅沢空間。

バロック絵画の最高峰でルーベンスの大傑作です!

 

盛り盛り増し増しでゴチャゴチャ ルーベンス

ピーテル・パウルルーベンス

〇1623年(46歳頃)の『自画像』

from wikimediacommons

 

この人はバロックを代表する超大画家です。

羨ましいくらいの人生順風満帆人生で奥さんともラブラブ。生前から才能が評価され、大成功。それは死後も変わらず大画家の名をほしいままに現在でも大人気の画家です。

 

当時の画家というのは、今の芸術家と違い職人です。自分の表現したいものを描くというより注文を受けて、クライアントの要望通りの絵を描く。

お金持ちの夫人に自画像を描いてと言われれば、ちょっと盛ってコンプレックスを隠しつつ美人に描く。ちょっとどころじゃないぽっちゃり系ご婦人を服や装飾品で見事に隠しつつ威厳や気品を持たせながら描く。画家の腕の見せ所です。忖度満載。

しかもルーベンスほどの大画家になると注文が殺到して一人で受けきれないので大工房を構えてスタッフを何十人(大画家になると100人以上)も雇って手伝ってもらう。構図や色や人物の主要な部分は自分で描いて、背景や服や装飾品などをスタッフにお任せする。今の漫画家さんと同じです。

そうやって大工房を構えるから一人じゃ描き切れないほどの作品数を世に排出できるのです。

だから、現代に残ってるルーベンス作品は紹介しきれないくらい膨大です。

ちなみに、本人の手がほとんど入ってない可能性が高い作品などは「ルーベンス工房作」となってたりします。ルーベンス作となってた作品が調査後、暫くたって工房作と名称を変えることもあります。

 

ラファエロティツィアーノクラーナハダヴィッドなども大工房を構えていました。

特にティツィアーノクラーナハはこの2人の作品を持ってない美術館はヨーロッパにはないといわれるくらい作品数が多いです。それは大工房を構えていたから。

 

ちなみに、ほぼ一人で制作してたのに大工房レベルの仕事をしてたのはミケランジェロ(描くのがめちゃくちゃ上手くて速い神職人)

クライアントの話を全然聞かずに激怒させて描きたいものを追求しまくったため作品数が異常に少ないのはレオナルド・ダ・ヴィンチ(良く言えば根っからの芸術家。迷惑な人。)

ルネサンス三大画家は三者三様で面白い。

 

話を戻して

いくら職人だ工房作だといってもやっぱり大画家。ルーベンスの隠せない才能と個性はどうしても出ちゃいます。

ルーベンスバロックを代表する画家です。

バロックといえば明暗対比の強い躍動的な人物表現。

暗闇にスポットライトが当たって演劇を見ているような世界観。

躍動的で大げさな感情表現。

ルネサンスの時代の神秘的で静的、安定的な構図と表現とは対照的。

つまりバロックは人間臭いんです。

ルネサンス時代と変わらず宗教画が多く描かれてますが、その宗教画の表現が人間臭い。

まさに前回書いたカラヴァッジオの表現そのものです。

カラバッジオ作『聖アンナと聖母子』from wikimediacommons

 

カラヴァッジオの斬新さはその後の多くの画家が研究し、作風を真似ました。

ルーベンスもその一人。こういう人たちをカラバジェスティといいます。

しかもルーベンスは画面上に人物が縦横無尽にひしめくようにものすごい躍動的に描いています。

その代表作品が、ベルギー アントウェルペンの聖母大聖堂にある『キリスト昇架』『キリスト降架』『聖母被昇天』バロック宗教画の最高峰。

『聖母被昇天』 from wikimediacommons

 

日本人からするとかなりごちゃごちゃ。。。胸焼けしそうですが、どこもかしこも見ごたえ抜群。

細部を見ていったら何時間でも飽きないでしょう。

是非、めげないで見てほしいです。

とはいっても、3作品全部こまごま説明するとお腹がはち切れるので『キリスト降架』を見ていきます。

 

アニメ「フランダースの犬」の中でネロ少年がどうしても見たかった作品がこの3つ。

アニメのクライマックスでネロ少年はこの絵の前で天使に導かれて逝きます。

イエス・キリストがすべての人間の罪を背負って十字架にかかる場面が『キリスト昇架』。イエス様が亡くなって十字架から降ろされる場面が『キリスト降架』

三連祭壇画というものです

『キリスト降架』from wikimediacommons

左翼は「エリザベト訪問」妊娠したマリア様が親戚のエリザベトに相談に行く場面。

処女のまま妊娠して突然、「あなたは神の子を宿しました」といわれた後なので、マリア様のそれは不安そうな顔。階段の下にはイエス様の象徴ニワトリと不変不滅の象徴クジャクが描かれてます。

右翼は「神殿奉献」救世主を待ち望んでいたシメオンという人が幼子イエスを抱いて「この子だ!」と直感で確信した場面

 

左翼の裏側(扉の外側にも絵が描かれてます)には「聖クリストフォロス」赤ちゃんのイエス様を背負って川を渡った聖人

右翼裏面には隠者(宗教者)がランプで道を照らす場面

 

from wikimediacommons

 

 

そして中央パネル

from wikimediacommons

青白い顔のイエス様を白い衣に包んで慎重に数人で降ろしていく。赤い衣は使徒ヨハネ。青い衣の聖母マリア様は悲痛な顔で息子をみています。この3色の対比。そしてイエス様の体の重さが左下に流れていく感じが非常によく描かれてます。

 

『キリスト昇架』ではさらにダイナミックにイエス様がすごい重量感と躍動感でよいっしょと持ち上げられていく様子がわかります。そしてこっちのほうがすごくごちゃごちゃ。

from wikimediacommons



もう一つ紹介したいのが

ルーベンスの超大作『マリー・ド・メディシスの生涯』

ルーベンスがフランス王アンリ4世とその妃マリー・ド・メディシスとの生涯を描いた作品。

 

しかし、長くなってきたのでこちらは次回。

 

イタリアの偉大なる画家にして殺人者カラヴァッジオ(続き)

今回はカラヴァッジオ後半です

 

前回はこちら

 

hiro-ame.hatenablog.com

 



前述した通りカラヴァッジオ天晴な犯罪歴にもかかわらず、超VIPパトロン枢機卿たちにもみ消してもらったりしてすぐに牢屋を出してもらえてました。(当時のキリスト教の腐敗がよくわかります)

そのせいでカラヴァッジオが調子に乗って犯罪を繰り返していたのか。とにかく事件を起こしまくり。

記録が残っているものをいくつかを羅列してみます

 

1600年:パトロンデルモンテ枢機卿の客で貴族を棍棒で殴打

1603年:ジョバンニという画家を侮蔑する詩を書いて名誉棄損で訴えられる

1604年5月~10月:違法な武器所持、市警への侮蔑の罪で数回逮捕、居酒屋のウェイターにアーティチョークの皿を投げつける

1605年:公証人マリアーノに重傷を負わす→一旦ジェノヴァに逃亡

    帰ってきてから、家賃滞納して大家に訴えられ腹いせに大家宅に石を投げ込む

そしてついに

1606年:トマソーニという半グレと口論・乱闘(決闘?)の末、殺害

 

トマソーニは裕福なスペイン系の家でした。

カラヴァッジオパトロンはフランス系であったのもあり政治的なものも絡んで、今回はさすがに殺人ということもありもみ消してもらえなかった。相手も悪かった。

そして、殺人罪で斬首刑を宣告、懸賞金までかかりました。

懸賞金目当てで色んなワルから襲われるため、ローマにいられなくなり各地を転々と逃亡。

そして逃亡先で絵を描いて逃亡資金を稼ぐという壮絶な逃亡劇を繰り広げます。

 

カラヴァッジオの逃亡遍歴まで分かっています。

さらにこの人のすごいのは、逃亡先で静かにしてればいいのに匿ってもらった先でも暴力事件を起こして、さらに恨みを買い、どんどん敵を作り、どんどん追われます。

行く先々でもめ事を起こし、逃げては描き、描いては逃げ。。

だいぶメンタルも崩壊してきたのか。常に剣を持ちながら寝ていたようです。

 

逃げながらのためか描く時間が無くなってきたのか、だいぶ雑な作品もあります。それでもこれだけのものがサッサッサッと描けるのがカラヴァッジオがとんでもなく上手いところ。

 

『慈悲の七つの行い』

ナポリに逃げた頃の作品。テネブリズム(暗闇主義)バリバリで真っ暗。天使の体勢どうなってるんだ?

この作品のほかに『ロザリオの聖母』『キリストの鞭打ち』などを短期間で描いてナポリ一有名な画家になって逃亡資金を稼ぎます。

from wikimediacommons

 

『アロフ・ド・ヴィニャクールと小姓の肖像』

次に、マルタ島へ逃げます。そこで「マルタ騎士団」へ身柄を保護してもらいに行きます。当時の騎士団長の肖像画。お礼代わりに絵を描いてます。

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しかしここの団員とも喧嘩して大怪我を負わせて、居られなくなり、逃亡。

マルタ騎士団も敵に回します。




〇『聖ルチアの埋葬』

シチリア島逃亡時の作品。背景を満足に描く時間や絵の具の余裕がなかったのか?なんとなく背景が雑にも思えます。

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そして、敵に襲われ重傷を負います。

ついに、「もう無理です。。。出頭してローマ戻ります。反省してます。特赦出してもらえませんか。。。」と枢機卿に手紙を出します。

 

手紙と共に送ったのがこの作品

〇『ゴリアテの首を持つダヴィデ』

英雄ダヴィデがユダヤの敵ゴリアテを倒して首を切ったシーン

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この絵の首は自分。自画像です。文字通り「首を差し出します」

ダヴィデとゴリアテ旧約聖書の話を絡めた反省してますアピールの作品。

しっかりした画力で二重の意味を持たせ、この絵を送るとは当時の知的センスは高いです

(今の日本人でこんなことできる人いるんだろうか?)

反省してます。許してください。とローマにこれを送ります。

 

枢機卿たちが頑張ってくれて「特赦出るっぽいよ!」と手紙をもらい

何とかローマに戻ろうとしますが重症の傷が癒えず(まともに治療できたかどうか)熱病でフラフラ。

ローマに辿り着けず、最後は野垂れ死ぬという結末に。



まるで物語を読んでるかのような壮絶なお話。

こんなドラマティックな話はもちろん映画化されてます。

 

何百年も後だとしてもこれだけの犯罪歴の人がお札になるくらいだから

罪を鑑みても偉大な画家なんでしょうね。

 

なぜ、こんなに癇癪もちで暴力的なのか。羨ましいくらいの才能を持ってるんだから大人しく絵を描いてれば枢機卿に重宝されて幸せな人生を送れたはずなのに。。。

 

2010年にあるイタリアの教会で人骨が発見されました。

これがカラヴァッジオの骨で間違いないだろうと考えられ、科学鑑定が行われました。

すると、骨に高濃度の鉛が検出。この人は「鉛中毒」で亡くなった可能性が高いとなりました。

当時の絵具には鉛が多く含まれており、鉛中毒は画家の職業病でした。

鉛中毒の症状の中には精神的な疾患もあり、もし、この骨がカラヴァッジオならあれだけの暴力的な性格もこれが影響していたのかもしれない。という説もあります。

 

それにしても壮絶な画家人生

カラヴァッジオの人生の明暗対比

イタリアの偉大なる画家にして殺人者カラヴァッジオ

バロックカラヴァッジオから始まったと前回書きました。

バロック芸術とは16~1700年代頃の芸術様式です。特徴については前回を見てみてください。

 

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今回は、バロック絵画を確立したといっても過言ではないカラヴァッジオの作品を見ていきます。

 

〇『カラヴァッジョの肖像画(1621年頃、オッタヴィオ・レオーニ画)

from wikimediacommons



 

カラヴァッジオはイタリアのお札になるほど西洋美術において超重要な画家です。

まさにバロック芸術という美術の一つの歴史を作った偉大な画家です。

この人は技術がありとにかく上手い。加えてこれまでの画家とは違う新世代の画家でした。

例えば、人物を描かせれば、その人その人の個性を見事に描き分ける。

その表現方法も素晴らしい。

〇『キリストの埋葬』

日本人としては手振りが大げさとも感じますが、一人ひとりの悲壮な感じがわかりやすいです。冷たくなったイエス・キリストの体重も分かるくらいどっしりした重量感など、非常にリアルです。後の画家が何人もこれを模写してます。

from wikimediacommons

 

〇『果物籠』

イタリアのお札に描かれた作品。

このただの静物画の何がすごいかというと、園芸関係の専門家がこの絵を見れば何の植物が描かれてて、どんな虫がどの葉っぱを食べたのか、どんな病気に罹ってるのかなどが分かる。それぐらいリアル。ブドウの表面の白い部分とか驚くほどリアルです。

そのぐらい詳細に明確に描き分けることができる技術をカラヴァッジオは持っていました。

from wikimediacommons




そして、バロックの特徴でもある、演劇でも見ているような、もしくは、その場に自分も参加しているような立体的な表現方法。

 

〇『エマオの晩餐』

人物の手が向こうやこちらに伸びているため、表現が分かりやすく、非常にダイナミックな動きで、見ているこっちもこの晩餐に参加しているかのようです。

今でいう没入感。バロック絵画の特徴の一つに「分かりやすい」「没入感」があります。

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〇『トカゲに噛まれた少年』

「痛い!」と顔をしかめる表現が絶妙。(顔がちょっと面白い)

from wikimediacommons



そして、バロックのスポットをあてたような光の表現。

 

〇『聖マタイの召命』

バロック美術の扉を開けたといわれる歴史的作品。

イエス・キリストが、徴税人(当時、人々から嫌わる仕事)のマタイに対して、イエスが名指しして十二使徒の一人になるようにと言う場面。

from wikimediacommons

この表現は斬新で驚愕でした。

エスでさえも暗く描かれています。

でも立派で堂々とした立ちふるまいであることがわかります。

すぐそばの十字の窓は未来のイエスの受難を示しています。

さらに後ろの窓からの光がイエスの手に沿って真っすぐ当たり、その光が、誰がマタイかを表しています。

ちなみに、誰がマタイかは2説あって、左から3番目の黒い帽子の親指で自分を指している男性。昔からこちらがマタイだといわれてきました「え!?私ですか??」という困惑のような顔をしています。

しかし、最近になって一番左のお金を数えて真下を向いてる男性ではないかとも言われてます。帽子の男性の人差し指がこの男性を指しているとの見方もできるからです。

個人的には後者な気もしますが。真相はいかに。

 

バロックの光は「神の光」です。

エスを通して神の召命が表現される決定的瞬間。

カッコイイ



これほどまでにどの作品をとっても素晴らしいカラヴァッジオですが

カラヴァッジオというと「殺人画家」とよく言われます。

殺人を犯してしまった画家はカラヴァッジオ以降もいることはいます。

でも、この人のすごいのは、とにかく画家以前に超がつくほどの手が付けられない程のワル。

ひどい暴れ者なんです。

あんなに神聖ですごい絵が描ける人なのに。。。

 

あれほどのものが描けるカラヴァッジオなので、カトリック枢機卿という超VIPパトロンに恵まれますが、でもそれが良くなかった。。

カラヴァッジオの犯罪遍歴の記録がいくつか残っています。それをみると暴行傷害、武器不法所持、不法侵入器物破損、殺人。。。等々

枢機卿がいくつかの犯罪を揉み消してくれたようで、調子に乗ってどんどん犯罪を犯したのかもしれません。

売れる前、20代の頃から半グレで、出身のミラノにいられなくなり、ローマへ逃亡。

ローマでもほぼ毎年数件事件を起こして捕まるという天晴れな暴れぶり!

 

聖書の神聖な絵を描いただけじゃなく、絵にもその尖がった性格が現れています。

 

アレクサンドリアの聖カタリナ』

聖女様の絵ですが、なんとモデルは当時誰でも知ってる超有名で問題行動も多かった高級娼婦。

当時、誰が見てもその人だと一目瞭然。「聖カタリナ様の絵だけど、顔があいつじゃん!」そうみると、自信に満ちた顔立ちが聖女というより玄人さんに見えてくる。

こういうことを平気でやる。

from wikimediacommons

 

〇『聖アンナと聖母子』

これに至っては物議を醸しすぎちゃって依頼した教会が短期展示して、すぐに売却。

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その理由は、マリア様 谷間出すぎ!エロい! イエス様 モロ出てるし!ちょっとは隠して!

アンナ様 お婆ちゃん!!

100年前に描かれたレオナルド・ダ・ヴィンチの『聖アンナと聖母子』と比較するとよくわかります。マリア様エロくない。イエス様ちゃんと隠してる。基本的に聖書に出てくるような聖人は年を取らない若々しい姿で描かれるので、アンナ様もちゃんと若い。やはり、絵全体としてこちらのほうが優美さや神聖さが出てます。こっちが正解。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』 from wikimediacommons

カラヴァッジオのは神聖視さというより妙に生々しいリアルさが絵に現れてます。それが描けるくらい上手くて革新的ということなんですが。

教会はダ・ヴィンチみたいなのを求めていたので、そりゃ受け取り拒否になるよね。

 

”アンナ様はマリア様のお母さんなんだからマリア様より年食ってるでしょ。イエス様も当時のリアルな子供はこうでしょ。”

 

現代の私たちからみれば、”そういわれればそうだね”と思うかもしれませんが、このリアルさは当時はありえないもの。聖なる人たちなんだから、威厳があって神々しく若々しい。凡人たる私たちと同列で考えてはイカンのです。

このリアリズムはものすごい時代を先取りした革新性があるものですが、当時は先取りしすぎちゃって。。。

 

息をするように犯罪を起こすカラヴァッジオなので仕事でももちろん忖度なんてしません。



これらの作品からも分かるように

カラヴァッジオの作品は背景がとにかく暗い。真っ暗。

バロックは背景が暗くスポットライトが当たっているかのような光による明暗対比の表現が特徴です。これを「キアロスクーロ(明暗対比)」といいます。

カラヴァッジオの暗闇は後世のほかの画家より更に暗いので「テネブリズム(暗闇主義)」といわれます。

 

でも、絵画以上にこの人の人生自体に明暗対比がすごい。



長くなってきたので続きは次回へ

バロックという名の劇場世界

バロック」とはどんな美術様式なのか?

バロックは1600〜1700年頃の様式です。

バロックの代表画家といえばカラヴァッジオルーベンスレンブラントフェルメールなどビックネームがいろいろ出てきますが、つまりどんな様式なんでしょう?

 

それより前の様式(1300〜1500年頃)である「ルネサンス」と見比べてみます。

 

ラファエロ・サンティ『システィーナの聖母』(左)

〇ピーテルパウルルーベンス『キリスト降架』(右)

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Mr.ルネサンスともいうべきラファエロの作品を見ると

左右対称、調和がとれて安定的、シンプルで静的、三角や円形を基礎とした構図

 

比べてバロックルーベンスの作品を見てみます

左右非対称、豪華で、装飾的で動的、曲線や楕円を基礎とした構図

特に絵画の分野では明暗対比が非常に効いた作品が多いです。つまりは背景が暗くて人物にスポットライトが当たっているような描き方。

 

バロックという言葉は、真珠や宝石のいびつな形を指すポルトガル語のbarrocoからきていると言われ、バロックを「ゆがんだ真珠」とも言われます。

つまり、安定した形のルネサンスと比べてゆがんだ(楕円)形とも言われます。

 

これは建築様式でも同じことが言えます、対称性で調和がとれた円形もしくは直線的な建築に比べてバロックは豪華で躍動的、曲線や楕円形。



絵画の分野ではさらに、スポットライトが当たったような場面でダイナミックで大げさな人物表現。

この明暗対比のことを「キアロスクーロ」といいます。

バロック美術はこの「キアロスクーロ」がメインとなります。

 

レンブラント『夜警』

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夜警とは夜の警備という意味ですが

この作品のもともとのタイトルは『フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊』

なんと、この作品、もともとは昼間に警備をしている絵です。全然昼に見えない。

油絵具を保護するニスが黒ずんでしまって暗い絵になったとも言われてますが、この絵、もともと暗っぽく描かれた絵です。

 

それは「明暗対比(キアロスクーロ)」を意識して描いてるから。

暗くなっちゃったからタイトルを『夜警』としたそうです。そうしたらこっちのタイトルが有名になっちゃいました。

この絵を見てもわかるように、まるで演劇の一場面みたいですよね。躍動的で劇場的なタッチ。

まるで演劇をみているかのような、もしくは、その世界観に自分も入り込んでいるような。

 

これを始めたといわれるのがイタリアの偉大な画家カラヴァッジオ

バロック美術はカラヴァッジオから始まったといわれます。

カラヴァッジオのキアロスクーロはほかの画家よりも明暗対比が効きすぎていて「テネブリズム」(暗闇主義)といわれます。

それぐらい真っ暗。それにオーバーリアクションすぎでしょというくらい人物がダイナミック。

 

カラヴァッジオゴリアテの首を持つダヴィデ』

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でも当時この表現が、新しかった。みんなすごい!とびっくりして、カラヴァッジオに続け!と若手画家のカラヴァッジオフォロワーが続出します。

このフォロワーのことを「カラヴァジェスキ」と言います。このカラヴァジェスキの活動から影響を受けた若手画家が現れ、、、という具合に、カラヴァッジオの影響はイタリアのみならず、スペイン、オランダ、フランスなどヨーロッパ中に。

カラヴァッジオのことを知らなくても、この絵画様式が広まっていきました。

バロック様式」はこのカラヴァッジオの描き方を基本に各国で様々に展開されていきます。

 

そのバロック様式の特徴が、前述したように躍動的で、スポットライトに照らされてるかのような明暗対比による劇場的な世界。

 

このバロックという劇場世界を主要芸術家と共に次回からみていきます。