〇1623年(46歳頃)の『自画像』

この人はバロックを代表する超大画家です。
羨ましいくらいの人生順風満帆人生で奥さんともラブラブ。生前から才能が評価され、大成功。それは死後も変わらず大画家の名をほしいままに現在でも大人気の画家です。
当時の画家というのは、今の芸術家と違い職人です。自分の表現したいものを描くというより注文を受けて、クライアントの要望通りの絵を描く。
お金持ちの夫人に自画像を描いてと言われれば、ちょっと盛ってコンプレックスを隠しつつ美人に描く。ちょっとどころじゃないぽっちゃり系ご婦人を服や装飾品で見事に隠しつつ威厳や気品を持たせながら描く。画家の腕の見せ所です。忖度満載。
しかもルーベンスほどの大画家になると注文が殺到して一人で受けきれないので大工房を構えてスタッフを何十人(大画家になると100人以上)も雇って手伝ってもらう。構図や色や人物の主要な部分は自分で描いて、背景や服や装飾品などをスタッフにお任せする。今の漫画家さんと同じです。
そうやって大工房を構えるから一人じゃ描き切れないほどの作品数を世に排出できるのです。
だから、現代に残ってるルーベンス作品は紹介しきれないくらい膨大です。
ちなみに、本人の手がほとんど入ってない可能性が高い作品などは「ルーベンス工房作」となってたりします。ルーベンス作となってた作品が調査後、暫くたって工房作と名称を変えることもあります。
ラファエロやティツィアーノ、クラーナハ、ダヴィッドなども大工房を構えていました。
特にティツィアーノやクラーナハはこの2人の作品を持ってない美術館はヨーロッパにはないといわれるくらい作品数が多いです。それは大工房を構えていたから。
ちなみに、ほぼ一人で制作してたのに大工房レベルの仕事をしてたのはミケランジェロ(描くのがめちゃくちゃ上手くて速い神職人)
クライアントの話を全然聞かずに激怒させて描きたいものを追求しまくったため作品数が異常に少ないのはレオナルド・ダ・ヴィンチ(良く言えば根っからの芸術家。迷惑な人。)
話を戻して
いくら職人だ工房作だといってもやっぱり大画家。ルーベンスの隠せない才能と個性はどうしても出ちゃいます。
バロックといえば明暗対比の強い躍動的な人物表現。
暗闇にスポットライトが当たって演劇を見ているような世界観。
躍動的で大げさな感情表現。
ルネサンスの時代の神秘的で静的、安定的な構図と表現とは対照的。
つまりバロックは人間臭いんです。
ルネサンス時代と変わらず宗教画が多く描かれてますが、その宗教画の表現が人間臭い。
まさに前回書いたカラヴァッジオの表現そのものです。

カラヴァッジオの斬新さはその後の多くの画家が研究し、作風を真似ました。
ルーベンスもその一人。こういう人たちをカラバジェスティといいます。
しかもルーベンスは画面上に人物が縦横無尽にひしめくようにものすごい躍動的に描いています。
その代表作品が、ベルギー アントウェルペンの聖母大聖堂にある『キリスト昇架』『キリスト降架』『聖母被昇天』バロック宗教画の最高峰。

日本人からするとかなりごちゃごちゃ。。。胸焼けしそうですが、どこもかしこも見ごたえ抜群。
細部を見ていったら何時間でも飽きないでしょう。
是非、めげないで見てほしいです。
とはいっても、3作品全部こまごま説明するとお腹がはち切れるので『キリスト降架』を見ていきます。
アニメ「フランダースの犬」の中でネロ少年がどうしても見たかった作品がこの3つ。
アニメのクライマックスでネロ少年はこの絵の前で天使に導かれて逝きます。
イエス・キリストがすべての人間の罪を背負って十字架にかかる場面が『キリスト昇架』。イエス様が亡くなって十字架から降ろされる場面が『キリスト降架』
三連祭壇画というものです。

左翼は「エリザベト訪問」妊娠したマリア様が親戚のエリザベトに相談に行く場面。
処女のまま妊娠して突然、「あなたは神の子を宿しました」といわれた後なので、マリア様のそれは不安そうな顔。階段の下にはイエス様の象徴ニワトリと不変不滅の象徴クジャクが描かれてます。
右翼は「神殿奉献」救世主を待ち望んでいたシメオンという人が幼子イエスを抱いて「この子だ!」と直感で確信した場面
左翼の裏側(扉の外側にも絵が描かれてます)には「聖クリストフォロス」赤ちゃんのイエス様を背負って川を渡った聖人
右翼裏面には隠者(宗教者)がランプで道を照らす場面

そして中央パネル

青白い顔のイエス様を白い衣に包んで慎重に数人で降ろしていく。赤い衣は使徒ヨハネ。青い衣の聖母マリア様は悲痛な顔で息子をみています。この3色の対比。そしてイエス様の体の重さが左下に流れていく感じが非常によく描かれてます。
『キリスト昇架』ではさらにダイナミックにイエス様がすごい重量感と躍動感でよいっしょと持ち上げられていく様子がわかります。そしてこっちのほうがすごくごちゃごちゃ。

もう一つ紹介したいのが
ルーベンスがフランス王アンリ4世とその妃マリー・ド・メディシスとの生涯を描いた作品。
しかし、長くなってきたのでこちらは次回。