2023年6月から上野 東京国立博物館で開催している『古代メキシコ展 マヤ、アステカ、テオティワカン』へ行ってきました。
マヤ、アステカ、テオティワカン文明は現在のメキシコ、ガアテマラ、エル・サルバトル、ホンジュラスのあたりにあります。
占いなどが好きな人はマヤ暦占いなどで知っているかもしれません。
ピラミッドといえばエジプトですがここにもピラミッドがあり、この地域の神話や文明があります。しかもとても面白いことにピラミッドの階段の段数がマヤの暦に対応していたりと、神様がピラミッドに彫刻されていたり、建造物にそれぞれ意味があるようです。
エジプトと比べてまだ発掘研究が進んでいないため詳しいことはまだわかっていない点も多くありますが、とても魅力的です。
そのピラミッドや神殿など、この地域で発掘された出土品が今回の展示作品です。
展示構成は
Ⅰ.古代メキシコのいざない
Ⅱ.テオティワカン
Ⅲ.マヤ
Ⅳ.アステカ
<Ⅰ.古代メキシコのいざない>
古代メキシコはマヤやアステカ文明より前にオルメカ文明がありました、マヤやアステカ文明の基盤のような文明だったようです。
そのメキシコの自然との共生、食文化、天体や暦、スポーツそして人身供犠について。
この人身供犠はなんと16世紀(つい最近!)でもやっていたことが目撃されているというから驚きです。
この地域はジャガー信仰があったようで、ジャガーと人間が一体となった石偶や土器が出土してます。実物を見てジャガー要素はいったいどこにあるんだろう?と思うような、ずいぶんリアルな泣いてる赤ちゃんのようでしたが。
そしてメキシコといえばトルティーヤ!ということでトウモロコシにも神様がいます。トウモロコシの女神の火鉢。こんなに複雑な装飾で使えるんだろうか。
一番興味深かったのは絵文字。天体や暦を記録するための石板の絵文字がどれもこれも面白い!
<Ⅱ.テオティワカン>
メキシコ中央高原に位置する都市遺跡テオティワカン。テオティワカンとは「神々の座所」という意味で、太陽のピラミッド、月のピラミッド、羽毛の蛇のピラミッド、死者の大通りなどがあり、様々な宗教祭式が行われていた。
ここは世界遺産に指定されています。ここでの出土品も神々に関するものばかり。
「死のディスク」
結構大きかったです。沈んだ太陽の象徴で、夜明けとともに再生する。死と再生は同義のようです。中央の骸骨がデフォルメされててなんだか可愛らしい印象です。
「羽毛の蛇神石彫」
後ろの写真が羽毛の蛇のピラミッド。この石彫がピラミッドに装飾されていて、エジプトのピラミッドとはまた随分と違う趣。
この神が有名なアステカ神話の文化・農業の神「ケツァルコアトル」マヤでは「ククルカン」
顔が蛇というより龍?沖縄のシーサーや神社の狛犬にも似てるかな?などと思ってみていました。
ちなみに、メキシコ周辺に生息する世界一美しい鳥といわれるケツァールはケツァルコアトルの使いということだそうです。非常に綺麗な緑の鳥で優雅な尾と可愛らしい顔です。手塚治虫先生の「火の鳥」もこの鳥がモデルです。
「嵐の神の壁画」
背景が赤くて非常にカラフルです。嵐の神だから非常に畏れられていたと思うが、現代の感覚でみるとやっぱりこちらも何だか可愛い。
<Ⅲ.マヤ>
マヤ文明はなんと紀元前1200〜紀元後16世紀まで栄えた文明。その長さに驚きました。その間に王朝があり、発達したマヤ文字や暦、都市間の交易や交流、戦争など巨大なネットワークが形成されていました。
さらに筆者が興味深いと思ったのは、通常文明は豊かな川の流域で栄えますが(インダス文明とかメソポタミア文明など)、この地域は大小数千もある「セノーテ」という天然の泉から水を確保していました。ここもダイバーたちの有名なダイビングスポットになるくらい非常に美しい泉です。
しかし、この泉にも多くの生贄や捧げものが捧げられており、大量の骸骨が沈んでいたというから驚き。
「赤の女王のマスク」
パレンケという王朝時代の13号神殿の棺の中にあった遺体とマスク。
ヒスイのマスクなのになんで赤の女王なんだろう?と思っていたら、辰砂という赤色含量で棺と遺体全体が目がチカチカするほど真っ赤でかなりの異彩を放っていました。マヤ文字がビッシリ書かれた石の棺を開けると、目がチカチカするほどの赤。発見者は鳥肌ものだったでしょうね。
この棺を丁寧に調べたらヒスイのマスクをしていたのです。真っ赤な棺に緑のマスク、どんな意味があったのか非常に気になります。
「チャクモール像」
変な形の像ですが、お腹のあたりの平らなところに生贄のための心臓などの捧げものを置いていたというからなかなか怖い像。器のような形じゃなく、人の形で台を作っているというのが独特です。しかもこっち向いてる。
「トニナ石彫171」
王様どうしが球技をしている場面を描いた石彫で上にマヤ文字もあります。年代と王様の名前が書かれています。古代エジプト文字のヒエログリフなどとは違い面白い。一つ一つの文字が神様の顔なんでしょうかね?とても興味深かったです。
<Ⅳ.アステカ>
アステカ文明は14〜16世紀に築かれた文明。16世紀といったら日本なら室町〜安土桃山時代。足利尊氏や織田信長も出てきちゃいます。こう考えるとつい最近まであったんだなあと驚きました。
「鷲の戦士像」
テノチティトラン遺跡の大神殿テンプロ・マヨールにあった像。ここの文明は人と動物を同一にする文化なのか。人とジャガーを一体にした石像もそうですし。鷲の擬人化なのか。これがなんの像かは諸説あるようです。筆者は人間の戦士が鷲の精霊の力を借りて戦うようにも見えます。
「テスカトリポカ神とウィツィロポチトリ神の笏形飾り」
アクセサリーも捧げものの心臓や神々に関するものが多いということで一貫して人身供儀や神々との関係性を大切にしていたようです。
古代メキシコ文明は動物と人間を一体化するような感性を持っていること。女王のマスクをはじめヒスイが多く出土されており。ヒスイは儀式に重要なアイテムでした。
また、人身供儀が非常に盛んで犠牲となることが名誉なことでもあり、血や心臓を大量に神々に捧げていたようです。おびただしいほどの数の骸骨が人身供儀の凄まじさを表わしているようでした。
それほどまでに神々との関係性を大切にしていたんですね。
それにもかかわらず、神々の彫像や図像、日用品は、現在の日本人の感覚で見ると、非常にコミカルで可愛くて面白かったです。当時の人々は決してそんな風には考えて作っていないでしょうが。それとも本当にこんな風に神々が見えてたのかな?
まだまだ紹介しきれないくらい魅力的な展示品ばかりで、古代メキシコの神々と生活に触れることができる興味深い展覧会でした。
ジャングルに覆われてなかなか発見発掘が難しかった古代メキシコ文明が、昨今ではLiDARという最新の航空レーザー機器によってどんどん巨大建造物が発見されているようです。さらなる発掘と研究が発展する事を願うと共に、神々に感謝。