今度こそ本題の「オフィーリア」のすごさについて
前回、ギリシャ・ローマ神話や聖書の話を理想的に描く究極形態であるラファエルより前の時代に立ち返ろう
理想的普遍的な絵じゃなくて、もっとありのままの自然を描いていこうという理念がラファエル前派だと書きました
本作「オフィーリア」はその理念を完璧に表現したまさにラファエル前派を代表する超大作なのです
From wikimedia commons
「オフィーリア」のすごさ
①シェークスピアが題材
これまでの絵画はギリシャ・ローマ神話や聖書の話について描いたものがほとんどでしたが
「俺たちはギリシャ人でもローマ人でもない。イギリス人はイギリス人の古典を描こうよ!イギリスの古典と言ったらシェークスピアでしょ!」
この題材がすでに斬新だった
②実在するありのままの自然
本作に描かれている自然は理想化されたものではなく実際にある場所
イギリスのサリー州ホッグズミル川のほとり
ミレイは何度もここに通って絵を描いていたそうです
③圧倒的な細密描写
本作の細部どこを見てもピントが合う超細密描写・超リアル
これはルネサンス以前の画家ヤン・ファン・エイクのような鮮やかな色彩の細密描写
ミレイは小さい頃から神童と呼ばれ絵がとってもうまい子どもでした
11歳で王立美術アカデミー附属学校へ入学しています
これは史上最年少記録
だからこんなにリアルな描写ができるほどの画力があったわけです
From wikimedia commons オフィーリアを描いた頃のミレイ
④花に象徴的な意味を持たせた
本作のオフィーリアの右手あたりにある赤い花はケシの花
緑の中にある赤は目立ちますよね
ケシの花は当時、「睡眠」や「死」という意味がありました
オフィーリアが持っている花にも意味があるのです
これはこの少し後に流行することになる絵画様式である「象徴主義」も取り入れられているのです
From Pxfuel
自国の古典を描く民族主義、ありのままの自然を描く写実主義、細密描写のゴシック回帰、象徴主義などまさにラスキンがいったことを圧倒的画力で表現した
ラファエル前派を代表する作品なのです!
しかし、皮肉なことにこの作品は敵対していた美術アカデミーでも評価されちゃいました
そしてこの作品がきっかけとなってミレイはなんと敵側の王立美術アカデミーの準会員に入会しちゃいます
ラファエル前派の実力部隊トップが敵側に行っちゃって他メンバーは総崩れ
結果的にラファエル前派は解散
ラファエル前派の代表でありラファエル前派を解散に追い込んだ皮肉な作品なのです
ちなみにスポークスマン ロセッティはのちにバーン=ジョーンズやウィリアム・モリスと一緒に活動しラファエル前派第二期とも言われます
それはまた今度
あらためて本作を見てみてください
本当に見事な作品です
植物の緑の美しさ綺麗でいわくつきの花々
オフィーリアのどこにも焦点があってなさそうな虚な視線
川に浮かぶ衣服の感じ
オフィーリアの口ずさむ歌と川の音が聞こえてきそうな静けさ
夏目漱石が魅了されるのも頷ける惚れ惚れするような作品です!