hiro_ame’s blog

美術マニアで科学と宗教を学ぶのが大好きな絵描き。

Report『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』

パリのポンピドゥーセンターは近現代芸術作品が揃うヨーロッパ最大の、大型の美術館です。

ここが近々改修工事ということで、重要作品がたくさん来た贅沢な展覧会でした!

ロベール・ドローネー『パリ市』
大きくて見応え抜群の名作

 

キュビズム」と言ったらピカソとブラックの2人で行った芸術運動。

”2次元の絵画を3次元のキューブとしていろんな角度からみた対象を描いた”と学んでいましたが、正直、何が描かれているのかよくわからない。これまで筆者は「キュビズム」にあまり興味がありませんでした。しかし今回のこの企画展で「キュビズム」の偉大さとその後の発展がよくわかりました!



キュビズムの起源

なぜ、キュビズムが始まったのか、きっかけは「近代絵画の父」セザンヌ

この人のいろんな角度から見た(多視点)対象を1枚の絵の中に入れるという描き方。当時の若い画家たちみんなに大きな影響を与え、他にも、元祖ウマヘタのアンリ・ルソーや当時流行った民俗学ブームのアフリカ彫刻。

それらが合わさって始まったのがピカソとブラックのキュビズム。個人的にはアンリ・ルソーの作品も来ていてとっても嬉しかったです!下手すぎて見ていてやっぱり面白い!

ポール・セザンヌ『レスタックの海』(これは本展覧会に展示されてません)
from wikimediacommons

 

ピカソとブラックの実験

2人のキュビズムの実験、セザンヌっぽい感じ(セザンヌキュビズム)→もっと細かく細分化してみた(分析的キュビズム)→さらに総合して文字書いたりコラージュとかも取り入れてみた(総合的キュビズム

この2人の実験の経過がわかります。

左からジョルジュ・ブラック『レスタックの高架橋』(セザンヌ的)
ピカソ『ギター奏者』(分析的)ブラック『果物皿とトランプ』(総合的)

 

キュビズムの発展とキュビズム以降

2人の実験は第一次世界大戦とともに終わってしまったけど、キュビズムの大きな流れはどんどん広がっていきます。それがホワン・グラス、アルベール・グレーズ、ジャン・メッツァンジェなどピュトー派といわれる人たちの作品。さらに、集合住宅兼アトリエ「ラ・リューシュ」に集まったシャガールモディリアーニキュビズム的作品、他にも、東欧(ロシア、ウクライナなど)のキュビストたち、そしてキュビズムの家!

左:フェルナン・レジェ『婚礼』右:ロベール・ドローネー『円形、太陽 no.2』
ドローネーはもうほぼ抽象絵画

左:マルク・シャガール 『墓地』右:アメデオ・モディリアーニ 『女性の頭部』

ミハイル・ラリオーノフ『散歩:大通りのヴィーナス』
ロシア立体未来派 キュビズムっぽくて動きがある

今回の企画展はここが非常に手厚いのでキュビズムの大きな流れがどのように発展していったのかがわかります。

便器にサインして展示してアート界に激震をもたらした「現代アートの父」マルセル・デュシャン(アート界は父が多い)含むデュシャン三兄弟もこの流れにいます。

レイモン・デュシャン=ヴィヨン『恋人たちⅡ』
(マルセル・デュシャンの兄)

キュビズムの家(内部):これからの家にはこんな作品(キュビズム)はどうでしょうとという新たな装飾芸術の提案を展覧会で紹介した。
鏡にキュビズム作品が写ってます。
左上あたりにキュビズムの時代のマリーローランサンの作品。

そして、キュビズム以降、現代建築の巨匠ル・コルビジェたちがキュビズムから更に発展させてもっとシンプルに余分な部分を削ぎ落した芸術運動を提唱。これが今私たちが見かけるシンプルなおしゃれアートやデザイナーズ建築となっていきます。

ル・コルビュジェ静物
だいぶシンプルになってきました。そろそろキュビズム卒業。

 

まとめ。

キュビズムをやっていたのはピカソとブラックだけじゃなかった。

○むしろドローネーやグレーズなどピュトー派と言われる人たちがキュビズムを世界に広めた立役者だった。

○当時の画家たち誰もが一度はキュビズムにはまっていたくらいの大流行だった。シャガールモディリアーニ藤田嗣治なんかもやっていたというから驚きました。

○そして、キュビズムがただのイチ芸術運動というだけじゃない、まさに「美の革命」といえる、以後の現代芸術の方向性を指し示す大変大きな流れだったということ。



日本では50年ぶりの大キュビズム展!

キュビズム以前・以後も含めて、歴史を彩った重要作品もたくさん来ており、非常に贅沢な展覧会でした!