hiro_ame’s blog

美術マニアで科学と宗教を学ぶのが大好きな絵描き。

葛飾北斎②『富嶽三十六景』『富嶽百景』

今回は『富嶽三十六景-凱風快晴』です!

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こちらも神奈川沖浪裏と同じくらい有名な作品です

「赤富士」とも呼ばれています



非常にシンプルな構図!

とても綺麗な富士の赤と

それに対比するように表現されている山の裾野と空の青

 

とても美しいです

 

凱風とは夏に吹く柔らかな南風のことです

なぜ富士が赤いのか、どの場所からみた富士なのかなど諸説あるようですが

柔らかく吹く南風の中、夏の早朝に現れた朝日を浴びて一瞬だけ赤く染まった富士

わずかに山頂に雪が残り

快晴の中、たなびくイワシ雲はとても気高く伸びています

気持ちの良い一日の始まり!



富嶽三十六景のほとんどの作品に

北斎は特別な藍色を使用しています



当時日本にあった藍色は露草など植物から抽出した自然顔料ですが

ここで使った色は海外から取り寄せたベルリンの藍「ベロ藍」(プルシャンブルー)という

人工的な藍色です

当時の絵師たちは、これまで植物系では表現できなかった鮮やかで透明感のある

綺麗なブルーに魅了されました

 

このブルーが当時の江戸の人達には大受け!

 

ベロ藍はとても高額だったと思いますが

それを北斎はこの富嶽三十六景で惜しみもなく使っています



富嶽三十六景』にはこのようなとっても大胆な構図と

ベロ藍のとても美しい作品がたくさんあります!

こんな表現方法や構図のとり方があるのか!

と現代でもびっくりするものばかりです!



高価な色を使い富士を色んな場所から描いたこのシリーズ

 

北斎にとって富士は何か特別な意味があったのかな?

それを示しているんじゃないかと思う絵があります



ここで『富嶽百景』について少し

富嶽百景』はすべて墨のみの白黒で描かれた絵を集めた本です

富嶽三十六景では描かなかった

さらに大胆で工夫を凝らした構図、

富士にちなんだ故事や説話(昔から伝わっている話、神話や伝説などの物語)

も描かれています

「初編」「二編」「三編」の全3巻からなる本です



富嶽百景-初編』第1枚目の絵は

木花開耶姫命(このはのさくやひめのみこと)』です

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富士山の絵のシリーズのはずなのになぜ女性か

 

この女性は日本の一番古い歴史本:古事記にでてくる神様で

富士山頂にある浅間神社に祀られています

つまり、『富嶽百景』第一枚目の絵に富士山の神様を描いているのです

 

ただ日本一の山だからという意味以外にも

北斎の富士山の信仰があるからこそ

富士山シリーズを描こうと思ったんだろうなというのが

この一枚からも感じられます

もちろんこれは筆者の考察です



ちなみに北斎という名前ですが

これもペンネームで、もともと「北斎辰政」の略称で、

北斗七星(北極星)からとったと言われています

日本には北辰妙見信仰という北斗七星を神様とする信仰もあるため

北斎の日本の神々への信仰があったんだろうなと筆者は思います



富嶽百景富嶽三十六景より日の目を見ることは

少ないですが

北斎らしい面白い作品がいっぱいです!



ちなみに富嶽三十六景ですが46作品あります

富嶽百景は102作品です

 

それだけ富士山シリーズが人気であったのと

北斎の富士山に対する愛と信仰があったのかなと思います

 

 

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました!