hiro_ame’s blog

美術マニアで科学と宗教を学ぶのが大好きな絵描き。

「プロセルピナ」作品から見るロセッティという人物 3

ロセッティの第三回目です。

 

ロセッティの代表作としてこの作品もよく見かけます。

 

「プロセルピナ」

from wikimediacommons

 

私はこの作品の真の意味を知ったとき、かなりドン引きしました。。。

ロセッティ from wikimediacommons

 

と、その前に、話はロセッティの奥さんエリザベス・シッダル(通称リジー)が亡くなって、その追悼作品「ベアタ・ベアトリクス」を描いていたころです。

エリザベス・シッダル(通称リジー) from wikimediacommons

あんなにリジーの死に心を痛めて、追悼作品を描き、また、リジーのために詩を書き、それを棺とともに埋葬までしておいて。

ロセッティは亡くなって1年もしないうちに女遊びを再開。

他の人と結婚していた元浮気相手ファニー・コンフォースと関係を再開。

さらに、ウィリアム・モリスの奥さんでこちらも元浮気相手のジェーン・モリス(旧姓ジェーン・バーデン)にも執着していました。

ジェーン・モリス from wikimediacommons

 

そして、なんと、リジーとともに埋葬した詩を、「そういえばあれ、結構傑作だったから埋めたのもったいなかったな。」といって、なんと、友人にリジーの墓を掘り起こさせて、埋葬した詩を持ってこさせた!自分で掘り起こせよ!もう一回書けよ!

そしてその詩を出版。。。

と同時に「ベアタ・ベアトリクス」も完成。リジーの死から7,8年後のことでした。(「ベアタ・ベアトリクス」制作時間かかりすぎじゃない?とは筆者の感想)

from wikimediacommons

つまりこの追悼作品描きながらあっさり女遊び再開しているわけで、もうどんな神経しているのかと疑問に思わざるを得ません。

 

「ベアタ・ベアトリクス」は世間からかなり好評価でロセッティの最高傑作といわれています。

セルフコピーの作品も何作品か描いています。



女遊びの激しいロセッティはモリスの奥さんであるジェーンに特に執着していました。

このジェーンもなかなかの人で、「モリスはお金を持っていたから結婚しただけであって、彼を一度も愛したことはなかったわ!」と言っており、ロセッティと堂々と浮気をしていました。

 

ウィリアム・モリス from wikimediacommons

ジェーンの夫のモリスは尊敬するロセッティ先輩に強くは言えず。。。

また、モリスとジェーンの新居はモリスの仕事場所から遠いという理由でロンドン市内に引っ越しました。そのためロンドンにいたロセッティと浮気しやすくなっちゃう始末。

ロンドンの貴族社交界でどんどん噂になります。

苦心の末、モリスはロセッティと共同で(ほとんどモリスが支払った)コッツウォルズ地方に家を借ります。ロンドンだと噂になっちゃうから。。。

そして、このころからモリスはアイスランドに興味を持ち、夏の間は一人で旅行に行ってしまいます。

つまり、夏はコッツウォルズでロセッティと冬はロンドンでモリスと生活。

 

こんな生活の中で本作「プロセルピナ」は生まれました。

 

プロセルピナとはローマ神話に登場する春の女神、ギリシャ神話でいうペルセポネ

この神話は、冥界の神プルートーにプロセルピナが懸想されてプルートーはプロセルピナを急に誘拐!無理やり奥さんにしてしまいます。

プロセルピナの母の豊穣の女神ケレースが方々を探しますが見つからず憔悴。

やっと見つかったと思ったら、プロセルピナは冥界の食べ物ザクロを半分食べてしまったため地上に戻ることができません。

そこでプロセルピナは半分は地上で、半分は冥界で過ごすことでプルートーと合意します。

ケレースは豊穣の女神。

プロセルピナが地上に戻るとケレースが喜び春がやってきて作物が実ります。プロセルピナが冥界へ行くとケレースは悲しみ冬がやってきます。

これが、四季の起源と言われ、多くの画家がこの話を描いています。

 

つまり、夏(春)になるとジェーン(プロセルピナ)が戻ってきてロセッティと過ごす。冬になるとジェーン(プロセルピナ)はモリスと過ごす。

本作はそれを象徴した絵なんです。

 

なんともまあよくできた話だ。

 

本作のプロセルピナも悲しそうな難しい顔でザクロを食べています。

少しわかりづらいですが右上に文字が書かれています。そこにはロセッティの詩が書かれており

「可哀想なプロセルピナ」とあります。

お金で縛られているジェーンのことを不幸だ不幸だと言っています。

 

よくこれを絵にしたものだと。呆れるというか。

ジェーンのことがよほど好きだったのか。

この作品も人気でセルフコピーを8枚も描いています。

 

ところでジェーンは本当にロセッティを愛していたんでしょうか?

ウィリアム・モリスの親友バーン=ジョーンズがロセッティとジェーンの関係について興味深いものを描いています。それがこれ

バーン=ジョーンズの素描 from wikimediacommons



肥満体のハゲおやじが女性のためにいつでも用意できるようにクッションを持っています。

どうみてもジェーンがロセッティを手の上で転がしている!

これでもまだロセッティはジェーンは可哀想と言って、勝手に酒と薬をガンガンあおってついには脳軟化症と尿毒症で亡くなります。

 

ジェーンはロセッティ死後、次の年には新恋人の詩人ウィルフリッド・スカーウェン・ブラントと付き合いだしてます。もうこうなってくるとロセッティも可哀想になってきちゃいます。

 

ところで、一番可哀想なのは誰?

奥さんと憧れの先輩が不倫してそれ知っててじっとしてるウィリアム・モリスじゃないだろうか?

実はウィリアム・モリスはラファエル前派の考えをベースにアーツ・アンド・クラフト運動を起こして後世への影響が一番強い偉大な人です。



3回に渡りロセッティをだいぶディスってしまいましたが、性格と作品は別です。筆者もロセッティ作品は昔から大好きです。

(なんだか昨今の浮気した俳優さんの話みたいですが。。。)

是非とも素晴らしい芸術に今後も触れていただけたら幸いです。



次回はもう少しライトなウィリアム・モリスの話。